子供の歯並びはどう変化する?成長段階別の特徴
2025年10月21日
子供の歯並びの変化と成長段階
子供の歯並びは成長とともに大きく変化します。乳歯から永久歯への生え変わりや、顎の成長によって歯並びは徐々に形作られていきます。お子さんの健やかな口腔発達のためには、各成長段階での特徴を理解し、適切なタイミングで対応することが大切です。
歯並びの問題は見た目だけでなく、将来的な虫歯や歯周病のリスク、さらには咀嚼機能や発音にも影響を与える可能性があります。成長期の適切なケアが、お子さんの一生の財産となる健康的な歯並びを育みます。
乳歯期(0〜5歳)の歯並びの特徴
生まれてから約6ヶ月頃に最初の乳歯が生え始め、3歳頃までに20本の乳歯が生えそろいます。この時期の歯並びには、いくつかの特徴的なポイントがあります。
乳歯列期(乳歯が生えそろっている時期)には、前歯部分に「生理的空隙」と呼ばれるすき間が見られることがあります。
これは将来生えてくる永久歯のためのスペースを確保する自然な現象です。すき間がない場合は、将来的に永久歯が並ぶスペースが不足する可能性があります。

この時期に気をつけたいのは、指しゃぶりや舌の突出癖といった習慣です。3歳を過ぎても続く指しゃぶりは、前歯の位置や顎の発達に影響を与えることがあります。
また、口呼吸の習慣も歯並びに悪影響を及ぼす可能性があります。
乳歯期の歯並びケアで最も重要なのは、正しい口腔習慣の形成です。母乳育児を推奨する専門家もいます。母乳育児には、正しい舌位(舌の位置)の獲得や口腔周囲筋の発達を促す効果があるとされています。
また、離乳食の段階から前歯でかむ「前噛み」と奥歯でかむ「奥噛み」を正しく行えるようにすることも大切です。しっかりと噛むことで、顎の発達を促進します。
混合歯列期(6〜11歳)の歯並びの変化
6歳頃から永久歯への生え変わりが始まり、乳歯と永久歯が混在する「混合歯列期」に入ります。この時期は歯並びが最も大きく変化する時期であり、将来の歯並びを左右する重要な時期です。
混合歯列期は前期(6〜8歳)と後期(9〜11歳)に分けられます。前期は前歯が交換する時期で、後期は犬歯(糸切り歯)と小臼歯が交換する時期です。
特に前期は機能的な矯正治療の最適なタイミングとされています。

この時期の特徴的な現象として「醜い子供の時代(アグリーダックリングステージ)」があります。
永久歯が生えてくる際に、一時的に前歯が出っ歯のように見えたり、歯と歯の間にすき間ができたりすることがあります。
これは成長過程での一時的な現象であることが多いですが、気になる場合は歯科医院での相談をおすすめします。
混合歯列期に注意したいのは、永久歯の生えるスペースが足りているかどうかです。顎の大きさと永久歯の大きさのバランスが取れていないと、歯並びが乱れる原因になります。
この時期のお子さんは、少しずつ自分の意志で頑張れるようになってきます。姿勢や口呼吸、頬杖などの習慣に注意し、よく噛んで食べる習慣を身につけることが大切です。
また、発音がおかしい場合は舌癖(舌を歯に常に押し付けているような癖)を疑うこともあります。こうした問題は、早期に対応することで改善できる可能性が高まります。
永久歯列完成期(12〜14歳)の歯並び
12歳頃になると、第二大臼歯(いわゆる12歳臼歯)が生え、乳歯から永久歯への交換がほぼ完了します。この時期は骨格的成長が盛んな時期でもあり、顎の成長と歯並びの関係が重要になってきます。
永久歯が生えそろう頃には、それまでの口腔習慣や顎の成長の影響を受けた歯並びが形成されています。
この時期に気になる歯並びの問題としては、叢生(歯の重なり)、出っ歯(上顎前突)、受け口(下顎前突)、開咬(前歯が噛み合わない)、すきっ歯(空隙歯列)などがあります。
歯並びの問題は見た目だけの問題ではありません。噛み合わせの乱れ(不正咬合)は、食事のときにしっかり噛めず、消化器官に影響を与えることがあります。
また、顎に過度な力がかかり続けることで、顎関節に負担がかかりやすくなる場合もあります。
発音や滑舌の問題も生じることがあります。歯並びが乱れていると舌の動きが制限されるため、サ行やタ行などの発音が不明瞭になりやすくなります。
学校生活のように人と話す機会が多い場合は、コミュニケーションに影響が出ることもあります。
さらに、歯と歯のすき間に歯ブラシが届きにくい部位が多いと、磨き残しが増えてしまいます。そうすると、むし歯や歯周病のリスクが高くなってしまいます。
心理面への影響も見逃せません。見た目の問題から自信をなくし、友人とのコミュニケーションや外出に消極的になるなど、心理面に影響することもあります。
小児矯正のタイミングと効果
小児矯正は、お子さんの成長段階に合わせて行う矯正治療です。成長期の骨や筋肉の柔軟性を活かして、将来の歯並びや噛み合わせの問題を予防したり、改善を目指したりします。

一般的に小児矯正は、「Ⅰ期治療」と「Ⅱ期治療」の2段階で行われることが多いです。
Ⅰ期治療は6歳から11歳頃に行い、あごの成長を促して歯並びとお口まわりの機能(かむ・のみこむ・発音・呼吸)を育てるステージです。
Ⅱ期治療は12歳以降に行い、永久歯が生えそろった後の本格的な矯正治療です。
Ⅰ期治療で行うことは、主に口腔周囲筋のトレーニングです。歯並びが悪くなってしまう原因は、お口周りの癖による口腔周囲筋の機能不全によるものが大きいです。
口を閉じている際に舌先が歯の裏に当たっている「舌癖」や、食事を飲み込む際に舌が前側に出て行ってしまう「逆嚥下」、「口呼吸」なども口腔周囲筋の機能不全をもたらします。
こうした問題に対して、歯列矯正用咬合誘導装置(マイオブレース)などを使用して改善を図ります。マイオブレースは、口呼吸・舌の突き出し・指しゃぶりなどの改善に効果があります。
Ⅰ期治療が完了しても歯並びが悪い場合は、Ⅱ期治療を実施します。Ⅱ期治療では、ブラケットを使用した本格的な矯正治療やマウスピース矯正などが行われます。
小児矯正のメリットは多岐にわたります。永久歯の正しい生え変わりをサポートし、顎の発達を整えやすくなります。
また、発音や咀嚼機能の改善、むし歯や歯周病の予防にもつながります。さらに、将来の矯正治療の負担を減らせる可能性もあります。
家庭でできる歯並びケア
お子さんの歯並びは、日常生活での習慣によっても大きく影響を受けます。専門的な矯正治療だけでなく、家庭でのケアも重要です。
まず、正しい口腔習慣を身につけることが基本です。口呼吸ではなく鼻呼吸を習慣づけ、口を閉じた状態を保つよう意識させましょう。舌の正しい位置(上あごの前方部分に軽く触れる状態)も大切です。
食習慣も歯並びに影響します。よく噛んで食べる習慣をつけることで、顎の発達を促します。硬いものや繊維質の多い食品を取り入れ、噛む回数を増やす工夫をしましょう。
姿勢も歯並びと関係があります。猫背や頬杖をつく習慣は、顎の発達や歯並びに悪影響を及ぼすことがあります。正しい姿勢を保つよう声かけをしましょう。
指しゃぶりや爪噛みなどの癖がある場合は、3歳頃までに徐々に改善していくことが望ましいです。無理に止めさせるのではなく、別の遊びに興味を持たせるなど、自然に癖が減るよう工夫しましょう。
定期的な歯科検診も欠かせません。半年に一度程度、歯科医院を受診し、歯並びや顎の成長について専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。早期発見・早期対応が、将来の大きな問題を防ぐ鍵となります。
まとめ:子供の歯並びの変化を理解し適切にサポートする
子供の歯並びは成長とともに大きく変化し、各段階で特徴的な発達を遂げます。乳歯期(0〜5歳)では生理的空隙の確認や口腔習慣の形成が重要です。
混合歯列期(6〜11歳)は永久歯への生え変わりが始まり、歯並びが大きく変化する時期です。そして永久歯列完成期(12〜14歳)には、それまでの成長の結果が現れます。
歯並びの問題は見た目だけでなく、咀嚼機能や発音、さらには心理面にも影響を与えることがあります。
小児矯正は成長期の特性を活かした効果的な治療法であり、Ⅰ期治療とⅡ期治療を適切に組み合わせることで、お子さんの健やかな口腔発達をサポートできます。
家庭でのケアも重要です。正しい口腔習慣や食習慣、姿勢の維持など、日常生活での取り組みが歯並びに大きく影響します。
定期的な歯科検診を通じて専門家のアドバイスを受けながら、お子さんの成長に合わせた適切なサポートを心がけましょう。
お子さんの健やかな成長と美しい笑顔のために、歯並びの変化を理解し、適切なタイミングで対応することが大切です。気になることがあれば、専門医に相談し、お子さんに合った最適な方法を見つけていきましょう。







