子供の矯正〜Ⅰ期治療とⅡ期治療の違いと選び方
2025年10月21日
子供の矯正治療の基本〜Ⅰ期治療とⅡ期治療とは
お子さんの歯並びが気になり始めたとき、「矯正を始めるべきか」「いつ始めるのがいいのか」と悩まれる保護者の方は多いでしょう。子供の矯正治療は大きく「Ⅰ期治療」と「Ⅱ期治療」の2つに分けられます。
歯並びの問題は、単に見た目の問題だけではありません。噛み合わせが悪いと、将来的に顎関節症や頭痛、肩こりなどの原因になることもあります。

Ⅰ期治療は主に混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する時期)に行われる治療です。顎の骨の成長を利用して、歯が正しく生えるためのスペースを確保したり、上下の顎のバランスを整えることが目的です。
一方、Ⅱ期治療は永久歯が生え揃った後に行う本格的な矯正治療です。ワイヤーやマウスピースなどの装置を使って、一本一本の歯を理想的な位置に動かしていきます。
では、それぞれの治療について詳しく見ていきましょう。
Ⅰ期治療の特徴とメリット
Ⅰ期治療は、一般的に3〜12歳頃の子供を対象とした治療です。この時期は顎の骨がまだ成長途中で柔軟性があるため、成長を利用した治療が可能です。
Ⅰ期治療で主に行うのは、口腔周囲筋のトレーニングです。歯並びが悪くなる原因は、顎の骨格の問題だけでなく、口周りの筋肉の機能不全によるものも大きいのです。
例えば、口を閉じている際に舌先が歯の裏に当たっている「舌癖」や、食事を飲み込む際に舌が前側に出てしまう「逆嚥下」、「口呼吸」などの悪習慣が歯並びに悪影響を及ぼします。
Ⅰ期治療では、歯列矯正用咬合誘導装置(マイオブレース)という装置を使って、これらの悪習慣を改善していきます。マイオブレースは取り外し可能な装置で、1日数時間装着することで口腔周囲筋のトレーニングを行います。

Ⅰ期治療のメリットは以下のようなものがあります。
- ・痛みが少ない:取り外し可能な装置を使うことが多いため、固定式装置に比べて痛みや違和感が少なく、お子さんの負担が軽減されます。
- ・抜歯を回避できる可能性が高まる:顎の骨を広げることで、永久歯が生えるためのスペースを確保できるため、将来的に抜歯の必要性が減ります。
- ・手術を回避できる可能性が高まる:特に受け口(反対咬合)のお子さんは、早期に治療を始めることで、成人後の外科手術を避けられる可能性があります。
- ・Ⅱ期治療の期間短縮:Ⅰ期治療で顎の土台作りをしておくことで、Ⅱ期治療の期間が短くなることがあります。
ただし、Ⅰ期治療はお子さん自身の協力が必要です。装置の装着時間を守れないと、十分な効果が得られないこともあります。
Ⅱ期治療の特徴と方法
Ⅱ期治療は、永久歯が生え揃った後(一般的に12〜14歳頃)に行う本格的な矯正治療です。この時期になると、すべての乳歯が永久歯に生え変わり、第二大臼歯(いわゆる12歳臼歯)も萌出してきます。
Ⅰ期治療で顎の骨格や口腔周囲筋の機能を改善しても、歯並びが悪かったり、歯が回転してねじれた状態で生えてきたりすることがあります。そのような場合にⅡ期治療を行います。
Ⅱ期治療では、主に以下のような矯正装置が使用されます。
- ・唇側マルチブラケット矯正:歯の表側にブラケットを装着し、ワイヤーを通して歯を動かす一般的な矯正方法です。
- ・マウスピース矯正(インビザライン):透明なマウスピースを使用する矯正方法で、見た目が目立ちにくく、取り外しも可能です。
Ⅱ期治療は、Ⅰ期治療に比べて治療中の痛みや違和感が強く出ることがあります。特に固定式のブラケット装置を装着した後は、数日間痛みを感じることが一般的です。
また、矯正装置が付いていると食べ物が溜まりやすく、歯磨きも難しくなるため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。そのため、治療中は特に丁寧な歯磨きが必要になります。
Ⅱ期治療の期間は症状により異なりますが、おおむね1〜3年程度を見込んでおくとよいでしょう。
Ⅰ期治療とⅡ期治療の違いを比較
Ⅰ期治療とⅡ期治療は、それぞれ目的や方法が異なります。ここで両者の違いを明確にしておきましょう。
比較項目Ⅰ期治療Ⅱ期治療対象年齢3〜12歳頃(乳歯列期・混合歯列期)12〜15歳頃(永久歯列期)治療目的顎の骨格を整える、悪習慣の改善、永久歯が生えるスペースの確保永久歯の位置を整える、噛み合わせの調整主な装置取り外し式装置(マイオブレースなど)固定式装置(ブラケット)、マウスピース痛み・違和感比較的少ない装着初期は痛みを伴うことが多い治療期間1年半〜3年程度1〜3年程度
Ⅰ期治療とⅡ期治療は、別々の治療というよりも、連続した治療プロセスと考えるとよいでしょう。Ⅰ期治療で顎の骨格や口腔機能の土台を整え、Ⅱ期治療で歯並びを仕上げるという流れです。
ただし、すべてのお子さんがⅠ期治療とⅡ期治療の両方を必要とするわけではありません。歯並びの状態によっては、Ⅰ期治療だけで完了する場合もあります。
また、Ⅰ期治療を受けることで、Ⅱ期治療の期間が短くなったり、抜歯の必要性が減ったりするメリットがあります。
子供の矯正治療を始めるタイミング
子供の矯正治療をいつ始めるべきかは、多くの保護者が悩むポイントです。早ければ早いほど良いというわけではなく、お子さんの歯や顎の発育状態によって最適なタイミングが異なります。
一般的には、6〜7歳頃に一度矯正歯科医の診察を受けることをおすすめします。この時期は前歯の永久歯が生え始める頃で、歯並びや顎の成長に問題がないかを確認するのに適しています。
ただし、以下のような症状がある場合は、もっと早い段階での相談が望ましいでしょう。
- ・受け口(下の歯が上の歯より前に出ている)
- ・著しい出っ歯(上の前歯が大きく前に出ている)
- ・開咬(前歯が噛み合わない)
- ・口呼吸や舌癖などの悪習慣がある
- ・顎がずれている
特に受け口(反対咬合)は、早期に治療を始めることで効果が高まります。9〜10歳頃までに治療を始めることで、下顎の過成長を抑制し、上顎の成長を促進することができます。
一方、単純な歯並びの乱れ(叢生)であれば、永久歯が生え揃う12歳頃からⅡ期治療を始めるという選択肢もあります。
最適な治療開始時期は個人差が大きいため、気になる症状があれば、まずは矯正歯科医に相談することをおすすめします。
子供の矯正治療の費用と期間
子供の矯正治療にかかる費用は、治療方法や症状の重症度によって異なります。ここでは一般的な費用の目安をご紹介します。

Ⅰ期治療(予防矯正)の費用は、一般的に40万円〜50万円程度です。むらせ歯科千葉みなと院の場合、予防矯正の費用は44万円(税込)となっています。
Ⅱ期治療(本格矯正)の費用は、使用する装置によって異なります。
唇側マルチブラケット矯正(いわゆるワイヤー矯正)の場合、70万円〜90万円程度が一般的です。むらせ歯科千葉みなと院では77万円〜88万円(税込)となっています。
マウスピース矯正(インビザライン)を選択する場合は、さらに費用が高くなり、80万円〜110万円程度が目安です。むらせ歯科千葉みなと院では88万円〜110万円(税込)となっています。
また、矯正治療中は定期的な通院が必要となり、再診料も別途かかります。むらせ歯科千葉みなと院の場合、予防矯正の再診料は3,300円/月、本格矯正の再診料は5,500円/月となっています。
治療期間については、Ⅰ期治療は約1.5〜3年、Ⅱ期治療も約1〜3年程度を見込んでおくとよいでしょう。ただし、症状の重症度や治療への協力度によって個人差があります。
矯正治療は長期間にわたるため、費用面だけでなく、お子さんの通院負担や治療へのモチベーションも考慮して選択することが大切です。
子供の矯正治療に伴うリスクと注意点
子供の矯正治療には、様々なメリットがある一方で、いくつかのリスクや注意点も存在します。治療を始める前に、これらについてしっかりと理解しておくことが大切です。
まず、矯正装置を装着した後は、一時的に違和感や痛みを感じることがあります。
特にⅡ期治療で使用する固定式装置(ブラケット)の場合、装着後数日間は痛みを伴うことが一般的です。ただし、この痛みは一般的に1〜2週間程度で慣れてきます。
また、矯正装置が装着されていると食べ物が溜まりやすく、歯磨きも難しくなるため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。そのため、治療中は特に丁寧な歯磨きと定期的な歯科検診が重要です。
さらに、矯正治療によって歯を動かす際に、まれに歯根が吸収して短くなることや、歯肉が下がることがあります。また、非常にまれなケースですが、歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することもあります。
治療中に顎関節の痛みや音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることもあります。このような症状が現れた場合は、早めに担当医に相談することが大切です。
そして、矯正治療の成功には患者さん自身の協力が不可欠です。
特に取り外し式の装置(マイオブレースやマウスピース)は、指示された時間をしっかりと装着しないと効果が得られません。お子さんのモチベーションを維持するためのサポートも重要です。
最後に、矯正治療が終了した後も、「保定装置」と呼ばれる装置を使って歯並びを維持する必要があります。保定装置を指示通りに使用しないと、歯並びが後戻りする可能性があります。
これらのリスクや注意点を理解した上で、お子さんの歯並びの状態や生活スタイル、性格などを考慮して、最適な矯正治療を選択することが大切です。
まとめ:子供の矯正治療の選び方
子供の矯正治療は、Ⅰ期治療(予防矯正)とⅡ期治療(本格矯正)の2段階で行われることが一般的です。Ⅰ期治療では顎の骨格や口腔機能の土台を整え、Ⅱ期治療では永久歯の位置を細かく調整します。
矯正治療を始めるタイミングは、お子さんの歯や顎の発育状態によって異なりますが、一般的には6〜7歳頃に一度専門医の診察を受けることをおすすめします。
特に受け口や著しい出っ歯などの症状がある場合は、早期の治療が効果的です。
治療方法を選ぶ際には、お子さんの年齢や症状だけでなく、性格や生活スタイルも考慮することが大切です。
例えば、スポーツや楽器演奏をしているお子さんの場合、取り外しが可能なマウスピース矯正が適しているかもしれません。
また、矯正治療は長期間にわたるため、通院のしやすさや担当医との相性も重要なポイントです。
初回のカウンセリングでは、治療方針や費用、期間などについて詳しく説明を受け、疑問点はしっかりと解消しておきましょう。
矯正治療には一定のリスクや注意点もありますが、適切な時期に適切な治療を受けることで、お子さんの将来の歯の健康や全身の健康にも良い影響を与えることができます。
最終的には、お子さん自身の意思も尊重しながら、専門医とよく相談して最適な治療方法を選択することが大切です。
子供の矯正治療は、単に見た目を美しくするだけでなく、健康的な噛み合わせを獲得し、将来的な歯のトラブルを予防するための大切な投資と考えることができるでしょう。







